軍道紙未来研究所

軍道紙(ぐんどうかみ)とは、東京都無形文化財に指定されている伝統的な手すき和紙です。軍道紙は、江戸初期頃から作られていますが当時は大畑紙や大幡紙(おおはたがみ)と呼ばれていました。北区王子にある紙の博物館に所蔵される『大畑紙(軍道紙)の製造法』には、今は軍道紙と呼ばれている和紙が昭和29年に大畑紙と表記されていることに驚きます。わずか60年程前には大畑紙で通用したとも受け取れ、軍道紙という呼称は比較的新しいと言えます。※大畑紙については、「大畑紙について」の頁をご参照ください。

 

私はあきる野ふるさと工房で働く前までは、軍道紙についてほとんど知りませんでした。全国的にみても知名度は低く、華やかさに欠けますが、農閑期に細々とすかれた和紙は真の手すき和紙という風格を感じます。今までに日本やアジアの紙すきを100軒以上訪ねましたが、純朴に作る軍道紙はむしろ失われた味わいを今に伝える貴重な存在と言えるでしょう。多くの産地が機械すき和紙に転向したり、一部の工程を機械化または原料を海外に頼ることや薬品保存をして原料の腐敗を防ぐなどして、手すき和紙の技術を継承してきました。経済的にみて、当然の帰結ですが私はそこに何も魅力を感じません。

 

軍道紙未来研究所は、軍道紙の継承者であった故高野源吾さん(軍道紙技術保持者)の遺志を引き継いで、軍道紙の名前を絶やさないこと、軍道紙の製造技術を調査研究し、現代に生かす工夫を日々模索することを目的としています。