東京手すき和紙工房は、主に楮(こうぞ)、三椏(みつまた)を原料にして紙をすいています。これまで30年、多くの紙すき産地を見てきて、原料の大切さや原料をつくることで土地の風土や素材を慈しみながらものづくりをしている先輩たちの姿に、まさにその人そのものが紙に表れていると感じました。私もそうした紙づくりを目指していきたいです。
あきる野ふるさと工房で東京都無形文化財に指定された軍道紙をすいて技術を習得し、独立しました。軍道紙技術保持者だった故高野源吾氏には、わからないことがあるとたびたび質問しに行きました。源吾さんはよく、「工夫してやってください」と言っていました。それは、源吾さんが亡くなった今でも思い出す言葉です。軍道紙の素朴な伝統を守りながら、工夫して今の時代の和紙、原料や水にこだわった和紙を作っていきたい。