なぜ日本の和紙はタイ楮を沢山輸入し使用しているのか…。和紙をすき始めた20年前から疑問を持っていました。
夫がメコン川を探検した2005年にラオスでランテン族という民族が竹紙を作っていることを知らせてくれました。帰国後数年して、ふるさと工房で働いた資金をもとにタイそしてラオスをを旅しました。タイからメコン川を渡って簡単に入国できるフェイサイに魅力を感じ、翌年再び訪れました。そこには、竹を発酵させてつくる竹紙づくりの村がありました。訪れた時期が夏だったので、紙すきはしていませんでしたが、紙づくりの道具、一次発酵、二次発酵した竹繊維を観察することができました。彼らはヤオ族の支族ランテン族でした。
2011年、ベトナム最高峰のファンシーパンに登ろうと夫と計画し、地図を見るとタイ、ラオス、ベトナムと地続きで中国から移動してきたと言われるヤオ族が通過または居住しているだろうと推測。ファンシーパン山麓のサパで聞き込み調査を開始し、ヤオ族にたどり着きました。
ヤオ族は、焼き畑農業を繰り返しながら自由に野山を移動する民でした。それを可能にしたのが評皇券牒(ひょうこうけんちょう)の存在、そして紙づくりの技術です。評皇券牒とは、「祖先の由緒、免税や山中居住などの特権、官位の賜与などが漢字で書かれ、ミエン(ヤオ族)のアイデンティティの拠り所となっている(国立歴史民俗博物館HPより、( )内は筆者の補足)。」彼らは多くの支族に分かれていますが、私の調査ではランテンヤオ(ラオス)と赤ザオ(ベトナム)が現在でも紙づくりをしています。彼らは、多くの儀礼や記録用に紙を使います。
↑2009年、2010年調査
ラオス、フェイサイに住むランテン族の竹紙
こちらの村では、昔ながらの瓢箪柄杓で一杯づつかけ流す薄い竹紙づくりと、ビーターを導入し水槽から汲み上げてすくタイ式の紙すきも導入されていました。
↑2011年調査
ベトナム、サパ 赤ザオ族の紙づくり
詳しくは下記論文をご参照ください。
「手すき紙を通して知る人々の暮らしと文化 ベトナム北部サパにおけるザオ(ヤオ)族の竹紙づくり」百万塔第147号 21~41頁 平成26年 紙の博物館
「ヤオ族の製紙と漢字文書」和紙文化研究第22号 113~131頁 2014年 和紙文化研究会